ミネラル(mineral)とは、直訳すると「鉱物」のことですが一般には私たちの身体を構成する元素(生体元素、生命活動に必要な元素)のことをいいます。
地球上には約100種類の元素があり、身体の約96%は炭素・窒素・水素・酸素の4元素(有機物の構成要素)で構成されていますが、その4元素以外のすべての生体元素を総称してミネラルと呼んでいます(あるいは無機物、微量元素と表現されることもあります)。
私たちの身体を構成する細胞も多種類のミネラルで構成され、代謝活動でも中心的な働きをしています。
【ご参考】
⇒元素の周期表
⇒生体元素とは、生命維持に必要な元素の総称で生体ミネラルとも呼ばれます。
1-1)ミネラルは身体に必要な5大栄養素の1つ
身体に必要な5大栄養素 | ||
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タンパク質 | ⇒長期欠乏は困る? |
|
脂質 | ||
炭水化物(糖質) | ||
ビタミン | ||
ミネラル |
私たちの身体を正常に維持していくためには、5大栄養素をバランスよく摂取する必要があります。
そして、ミネラルは体内で作り出す(合成する)ことができないので、当然食べ物や飲み物から摂取する必要があります。
※通常「水」は栄養素として挙げられませんが、生命活動に必要なものという意味ではもっとも重要です。
大まかな身体の構成割合
(男性) 水=60%、タンパク質=17%、脂質=15%、糖質=0.5%、無機物=5%
(女性) 水=50%、タンパク質=17%、脂質=25%、糖質=0.5%、無機物=5%
1-2)ミネラルの主な働き
カルシウムやリンが骨の材料になるようにミネラルは身体の構成材料としてだけでなく、ビタミンとの共同作業など重要な働きをしています。
(1)酵素活性化と代謝機能の向上
私たちの生命活動は、口から取り入れた栄養素をさまざまな過程を経て、身体を構成する約60兆個の各細胞内に吸収することで維持されています。ミネラルは、この代謝機能にかかわる酵素を活性化しています。(詳細は後述)
(2)ビタミンの活性化と共同作業
ビタミンとミネラルは、共同で機能維持の働きをしています。大きな違いは、ビタミンが炭素・水素・酸素などからできている有機物であるのに対し、ミネラルは無機物である点です。
共通点は、ともに体内で合成することができないため(一部ビタミンは合成可)常に摂取していないと不足がちになる点です。ビタミンはミネラルが不足していると効果を発揮することができず体外に排出されます。
(3)身体のpH維持機能
私たちの身体は約pH7.3の弱アルカリ性が良好な状態で、身体を酸性に傾ける物質が入ったときにミネラルは中和する働きをします。
(4)細胞浸透圧作用の保持・調整機能
細胞は、細胞膜を通して外部の栄養素を取り入れ、内部の不要物を排泄しています。この作用を正常に保つために、ミネラルは細胞内液と外液のバランスを調整します。
※細胞浸透圧(濃度勾配)
一つ一つの細胞は、細胞内側と外側とのもののやりとりを細胞膜を通じて行います。たとえば、ナトリウムイオンは細胞外の濃度が高く、カリウムイオンは細胞内の方が高くなっています。細胞は、イオンが高い方から低い方に流れる濃度勾配(のうどこうばい)を利用して必要な栄養物などを摂り入れ、二酸化炭素などの老廃物を排出しています。細胞(身体)自体が、ミネラルの微妙なバランスで成り立っていることがここでも分かります。
1-3)ミネラル(元素)の種類
私たちの身体を構成する元素は、総称として「微量元素」あるいは「生体ミネラル」などと呼ばれ、体内中に存在する量によりさらに4区分されています。
身体を構成する大まかな元素の構成割合
酸素=65%、炭素=18%、水素=10%、窒素=3%…(有機物の構成元素)
カルシウム=1.85%、リン=1%…(多量元素)
カリウム=0.35%、イオウ=0.25%、ナトリウム=0.15%、塩素=0.15%、マグネシウム=0.05%…(少量元素)
以下、(微量元素)および(超微量元素)
1-4)現代型栄養失調(栄養の偏り)
現代社会に生活する私たちの食生活では、3大栄養素が摂取過剰で、「一部のビタミン」と「ミネラル全般」が不足という偏った傾向になりがちです。
食生活の西洋化やファーストフード・インスタント食品・加工食品が増えたことはもちろん、促成栽培(ハウス栽培・養殖など)された食材自体にビタミンやミネラルが少なくなっているため、バランスのとれた栄養を摂取することが難しくなってきています。
1-5)ミネラルと酵素
■当たり前ですが・・・「食べなきゃ生きられない!」
私たちの身体を構成している約60兆個の細胞は、エネルギーを補給しないと活動できません。
■そのエネルギーを化学反応(=燃焼=酸化)で生産しているのが酵素です。
口から取入れた有機化合物を酸化し、ATP(アデノシン三リン酸)という分子の化学エネルギーとして蓄え、さらにATPが酵素によって分解される時に発生するエネルギーが60兆個の細胞のエネルギーとして利用されます。
■酵素は体内に何千種類もあり、それぞれ違った化学反応を行っています。
現在約3000種類の酵素が分かっており、生命の中心的活動を行っています。有名な酵素としては、ダイエットなどで話題になる代謝酵素や消化酵素・食物酵素などがあります。
■栄養が偏ると酵素が本来の働きをできません。
ひとつの細胞には平均5000個の酵素があるといわれ、特定のミネラルが入ったときにはじめて働くものが多いのです。
現代社会のアンバランスな食生活は、ビタミンやミネラルとの連携で働く酵素にとって、その活動を鈍らせることになります。
酵素は通常体内で作られますが、不足した場合は食べ物から補う必要があります。加熱していない食べ物(生野菜・魚介類・なっとうなどの発酵食品)に酵素は含まれますので、ビタミンやミネラルと同様に食生活での配慮が望まれます。
もちろん免疫系も細胞で構成されています。細菌などの比較的大きい異物を飲み込んで処理するマクロファージや顆粒球(好酸球・好中球など)、ウイルスや小さい微粒子などの異物を接着分子で捕らえるリンパ球(B細胞・NK細胞・T細胞)。免疫細胞が正常に働いていないと、さまざまな病気の要因に対して十分な抵抗力を発揮できません。
■免疫系細胞への影響
もちろん免疫系も細胞で構成されています。細菌などの比較的大きい異物を飲み込んで処理するマクロファージや顆粒球(好酸球・好中球など)、ウイルスや小さい微粒子などの異物を接着分子で捕らえるリンパ球(B細胞・NK細胞・T細胞)。免疫細胞が正常に働いていないと、さまざまな病気の要因に対して十分な抵抗力を発揮できません。その結果、病気を抱え込むことになってしまいます。
※酵素補給について
酵素は通常体内で作られますが、不足した場合は食べ物から補う必要があります。加熱していない食べ物(生野菜・魚介類・なっとうなどの発酵食品)に酵素は含まれますので、ビタミンやミネラルと同様に食生活での配慮が望まれます。
1-6)ミネラル摂取の誤解
(1)拮抗作用
摂取するミネラルは、バランスがとれていないと拮抗作用(きっこうさよう)を起こします。1つのミネラルだけを摂取しても拮抗作用が働き、どのミネラルも単体で過剰摂取すると他のミネラルの吸収を妨げたり体外への排出を促したりします(例:カルシウムだけを摂取するとマグネシウムの不足を招く)。それが長期にわたると過剰症の心配もでてきます。
(2)市販ミネラルウォーター
市販ミネラルウォーターのミネラル含有量と種類は、一部の海外製品を除き水道水とあまり変わりません。ミネラルという名称がつくため多く含んでいるようにみられるようです。
1-7)ミネラルの供給源
私たち人間に必要なミネラルの主な供給源は、野菜・海草などの植物・水・塩です。一昔前までは普通に生活しているだけで、食事をすれば野菜や塩に含まれるミネラルが、また水を飲めばそこに含まれるミネラルが摂取でき、身体に必要なミネラルが自然に充足されていました。現代はどうでしょうか?
(1)野菜の現状
日本は土地(農地)が狭い上に、農業の近代化が進むにつれて単位面積あたりの収穫量を追求することになりました。さらに、多くの化学肥料や農薬の使用も収穫量の追及にはやむを得ませんでした。ところが、これらを背景にそこで育つ野菜に含まれるミネラルは急速に減少していったのです。
化学肥料は土壌に含まれるミネラル成分を減少させ、また土壌中の虫類がいなくなってしまうことと同時に土壌中の微生物相を変えてしまいました。この微生物相は、植物が根から土壌中のミネラル分を吸収する際に欠かせない存在です。農薬の使用は、土壌の悪化を招いたり農作物に残留することもあります。
同じく収穫量の追求のため、促成栽培や二毛作も行われました。植物が根から十分なミネラルを吸収するには、十分な時間が必要です。促成栽培で収穫を早めた作物は、ミネラル分も不十分です。作物栽培に使われた土壌は一時的にやせるため、回復期間として十分に休ませる必要もあります。二毛作を行うとやせた土壌を酷使することになり、当然そこで育つ植物のミネラル分は不足することになります。
加工食品においては、精製・製造段階で少なからずミネラルまで取り除かれてしまうという問題があります。また、加工食品の多くは保存性をよくするために食品添加物が加えられますが、これらはミネラルと強く結合する性質があるため、摂取したミネラルも添加物とともに対外に排泄されてしまう可能性もあります。
(2)水の現状
本来、飲料水に含まれるミネラルも重要なミネラル供給源です。しかし、上水のもとになる河川や湖における今日の汚染は、不純物が水に溶け込んでいるミネラルと反応して不純物とともに沈殿してしまいます。また、浄水する過程で取り除かれることもあります。このようなことから、水もあまり期待できるような状況にありません。
(3)塩の現状
1905年(明治38年)、政府は日露戦争の戦費調達を目的として、塩の専売制度を敷きました。この頃の製塩方法は、全国の塩田による「天日干し」で、食塩のみでなく海水中に含まれる種々のミネラルも含まれるため、身体に必要な微量ミネラルや超微量ミネラルも充足することができていました。
1971年(昭和46年)に、天候の影響を受けず、海洋汚染の影響も回避でき、海水の不純物を除去できる「イオン交換膜製塩法」という化学的な方法に切り替えました。この変更によって、「塩」に含有しているミネラル成分も激減してしまいました。
1997年の塩事業法成立により、5年間の移行期間を経て2002年(平成14年)に塩の製造販売が自由化され、現在市場には多くの天然塩が出回るようになりました。塩の取りすぎが良くないことは周知の通りですが、使うのであれば天然塩を使うべきです。
私たちの主なミネラル補給源である「水・野菜・塩」に含まれるミネラルは、もともと鉱石から溶け出したものです!
水(ミネラルウォーター)
雨が地中に染込んで流れる中で、鉱石のミネラル分が溶け出します。
しかし、日本の河川は短くヨーロッパなどのミネラルウォーターに比べ、ミネラル成分が圧倒的に少ないのが実情です。また、前述のように水質汚染や浄水の問題もあります。
野菜
地球創生時の岩石(鉱石)だけの地上に雨が降って、岩石から溶け出した成分が徐々に堆積したり、その後有機物の生死が繰り返されてさらに混ざり合ったものが現在の農地です。そして、微生物層や作物の根の働きで、農地のミネラルが野菜に吸収されます。
現代は、農薬・化学肥料・促成栽培などを背景に野菜もミネラルが激減しています。
塩
海の創生時に岩石からミネラル分が溶け出したことで、海水中には豊富なミネラルが含まれます。
しかし、精製の過程でミネラル成分が取り除かれ、栄養素としての価値は極端に下がってしまいました。それ以前に、現代人は塩分の摂りすぎという課題もありますので、ナトリウムの割合が多い塩の利用量には課題があります。